ザ ブルークリスタルロッド
THE BLUE CRYSTAL ROD
STORY

…In another time
 …In another world
今とは別の時間…
   こことは別の世界で…

 大いなる大地を、生き物のように
流れる大河、「ユーフレイト」。
 豊かなその流れは、地上に住む人々
の生活に幸せを運び、限りない富
を約束していました。

 心の思うままに暮らしていた人々
も、やがてはユーフレイトの岸辺に集
まり、川のほとりに1つの町を造りま
した。
 名前を、「バビリム」と言います。

 バビリムは、良き国王、「マーダッ
ク」に治められ、人々は神を敬って暮
らしていました。

 そんな下界を見守る、神々の王、
「アヌ」は、天上界に、「ブルークリス
タルロッド」を置いて、人間たちの信
心に答えます。

 ロッドのかがやきは、悪しき者をお
さえ、世界に平和をもたらす力を、
持っていました。

 その光に守られて、バビリムには争
いや、戦いが起きる事もなく、人々
は助け合って、日々を送っていたので
す。

 バビリムの守り神は、愛と戦いの
女神、「イシター」。
 女神に仕える、「巫女(みこ)」によっ
て、その言葉は人々に伝えられ、道
標となります。

 イシターの巫女は、大人になってし
まうと神の言葉を聞く力を失い、新
たな巫女が、バビリム生まれの少女
の中から選ばれます。

 また王家の男子は、イシター神の
巫女と結婚し、次の王となるのがバ
ビリムの定めでした。

 マーダック王の息子、「ギルガメス」
は、「ギル」と呼ばれ、町のみんなから
好かれていました。

 ギルとイシターの巫女、「カイ」は、
子供の時からの仲良しで、いずれは
バビリムの王と、王妃になる運命で
した。

 ところが、その日を待たずして、バ
ビリムの平和は、破られてしまったの
です。

 バビリムから、ユーフレイトを下っ
て海に出た所に、「スーマール帝国」
はあります。

 皇帝、「バララント」が治めるスー
マール帝国は、バビリムとは異なって
軍隊を持ち、常に争いが絶えない国
です。

 そのスーマールに、バビリムの空に
かがやく、ブルークリスタルロッドの
うわさが、流れて来たのです。

 スーマール軍は、見たこともない悪
しき鎧(よろい)に身を固め、ロッドを
手に入れるために、バビリムに向か
いました。

 戦うための力を持たないバビリム
には、何もすることができません。

 武器もないままに、王マーダックも
最後まで戦いましたが、結局バビリ
ムに残る市民の命と引きかえに、帝
国軍に討たれてしまったのです。

 バビリムは、アッと言う間に帝国の
手に落ちてしまいました。

 そして帝国は、ロッドをうばうため
に、天まで届く塔(とう)を造り始め
ました。
 バビリムの民はドレイにされ、塔を
造るために働かされたのです。

 そんなバララントの野望に、アヌ神
が気付かぬわけはありません。

 間もなく完成となった塔に、アヌ神
はいなずまを落とし、塔をこわしてし
まいました。

 いなずまは、スーマールの兵士たち
も、塔と共にこの世から消し去りま
す。
 しかし、すでに悲劇は始まっていた
のです。

 塔は、ロッドの光が地上に届くのを
さえぎっていました。
 その光は、女神イシターとの戦いに
敗れた悪魔、「ドルアーガ」をも、ふう
じこめていたのです。

 魔力をうばっていた光が消え、ドル
アーガは再び力を取りもどし、この
地上に復活していました。

 ドルアーガは、再び魔力をふうじら
れる事をおそれて身をかくし、ロッド
をうばい取るチャンスを、ねらってい
たのです。

 一夜明けたバビリムでは、だれもが
目の前の光景を疑いました。
 なんと、くずれ去ったはずの塔が、
完成した姿をそこに見せていたので
す。

 天にロッドの光はなく、悪の気配
が塔を包んでいます。
 ドルアーガが魔力で塔を修復し、
天上界からロッドをぬすんでいたの
です。

 アヌ神は、人間のわがままや無知
にすっかり失望し、ドルアーガのなす
がままにさせていました。

 世界はヤミに包まれ、だれも神を
信じることなく、人々は不安にから
れて争い続けたのです。

 王子であったギルガメスも、塔を造
るドレイの一人となって、働かされて
いました。
 そして塔がこわされた時、運悪く
建物の下じきになったのです。

 大きなケガでしたが、カイの看病に
よって、幸いにも命は取り留めます。
 しかし、いつ覚めるともしれない、
ねむりに落ちていました。

 そんな時でもカイだけは神を信じ、
毎日イシター神にいのっていました。

 カイのいのりはイシター神に届き、
世界を救う方法を授かります。
 それは、だれかがドルアーガより
ロッドを取りもどし、天上界に返す
ことでした。

 カイは、自らが塔に出向く決心を
し、イシター神に申し出ました。
 イシター神は、勇気を身軽さに変
える魔法の、「ティアラ」を授け、カイ
を塔に向かわせました。

 そしてギルが長いねむりから覚める
ように、力をあたえたのです。
 神々の王アヌが人間たちを見捨て
ているため、イシター神にもこれがで
きる限りのことでした。

 塔の中は、ドルアーガの復活と共
に地上に現れた、モンスターでいっぱ
いです。

 戦うことが許されない巫女には、
塔の中は苦難の道でした。

 そんなカイにも、味方はいました。
 地上に降りたロッドの光から生ま
れた、ドラゴンの、「クォックス」です。

 クォックスに助けられ、カイはつい
に最上階までたどり着き、ロッドを
前にします。

 しかしその時、ロッドはあやしい光
を出しながらグリーン・レッド・ブルー
の3つに分かれ、カイの前から消えま
した。

 見回すカイの背後に、8本の手を
持つ不気味なカゲが…。

 なんとカイの姿は、1つの大きな石
へ変わってしまいました。

 勝ちほこったように、姿を現すドル
アーガ!
 その魔力の前に、世界の希望は失
われてしまったのです。

 ケガに苦しんでいたギルの前に、一
人の不思議な姿をした者がやって来
て、カイがドルアーガに敗れ、とらわ
れの身になった事を告げました。

 フードの中から、その目だけが異常
に光り、マントからは永遠のヤミの
ような、黒い姿が見えています。

 その者はさらに続けました。
 剣の力さえあれば、ドルアーガに勝
つこともできると…。

 それを聞いたギルは、カイを救うた
めに力を授けて欲しいと、天にいの
りました。
 バビリムには、戦うための剣など無
かったのです。

 天上界にも、そのいのりは届きまし
た。
 アヌ神は、人間に最後のチャンスを
あたえる決心をし、ギルに魔法の鎧
を授けます。

 それは持つ者の勇気を戦う力に変
える、黄金の鎧でした。

 ついにギルは、ゴールデンナイトと
なって、ドルアーガの塔へ乗りこんだ
のです。

 アヌ神が人間を見捨てたので、ド
ルアーガは安心して、塔の守りをお
ろそかにしていました。

 しかし予測をうらぎって、巫女のカ
イがロッドを取りにやって来たため、
さらに守りを固めることにしました。

 アヌ神のいなずまに打たれた、帝国
のナイト達を魔力で復活させ、塔の
守りに着けたのです。

 ドルアーガの魔力で、ロッドが3本
に分かれてしまい、クォックスも悪し
き3種のドラゴンに姿を変え、塔の
中をさまよっています。

 しかしギルは、ナイトとしての力を
身に付け、次々に敵を破って行きま
した。

 魔法の鎧は、ギルの成長に従って
その形を変え、やがてギルは、ロッド
と同じ青いかがやきを、身に付けま
す。

 ドルアーガは、3本に分かれたロッ
ドの内、最も大切なブルーロッドを、
夢魔、「サキュバス」に守らせていまし
た。

 しかしサキュバスは、神と戦い続け
るドルアーガに、争うことの無意味
さを分からせるため、ギルにロッドを
わたしてしまいます。

 ドルアーガの魔力を、サキュバスか
ら授かったロッドの光でかわし、ギル
は剣の力で、ついにドルアーガを討ち
取りました。

 3本に分かれたロッドを、再び1つ
にまとめると、カイも元の姿にもどり
ました。

 カイは、ブルークリスタルロッドを
手にすると、その光で塔を包んでい
た魔力を、消し去ったのです。

 しかし、ドルアーガの魔力で修復さ
れていた塔は、アヌ神にこわされた
姿にもどってしまいました。

 せっかくの帰り道も失われ、主のな
いモンスターは以前にも増して、しつ
ように二人におそいかかります。

 ロッドの力を手に入れたカイは、そ
の光がもたらす魔法を使って、ギル
と共に出口を目指しました。

 やがて二人は、塔のエントランス
ホールに着きます。
 そこに待っていたのは悪魔、「アン
シャー」の手先、「アキンドナイト」
だったのです。

 アンシャーは、アキンドナイトとの
戦いでつかれたギルをたおし、ロッド
をうばって、世界から消してしまう
予定でした。

 しかしロッドの光とギルの剣は、ア
キンドナイトと、アンシャーの野望を
破りました。

 塔の入口が開き、無事に二人は地
上に帰って来ました。

 to be continued…
 しかしロッドを天に返すまで、二人
の旅はまだまだ続くのです…。

FEATURE
 シリーズ中、唯一アクション要素のない作品。
 プレイヤーは基本的にギルとなり、天上界にブルークリスタルロッドを変換するため、本拠地・バビリムの周囲で起こる試練に挑んでいく。

 ゲームは基本的に、イシターとの対話→試練を3〜4回くり返せばエンディングにたどり着く。ストーリーはイシターとの対話で選んだ選択肢(「はい」と「いいえ」のどちらか)によって分岐し、それによって見られるエンディングは合計48種類。試練そのものは非常に単純なもので、難しそうに思えてもあちこちにヒントがころがっているし、よほどのことがない限りゲームオーバーにはならない。
 つまり、このゲームの主目的は48もの結末と、そこに至るまでの過程を「見る」ことにあると言える。

 そして、このゲームの最も奇妙な点は、「誰にでも楽しめるわけではない内容」にあると言えよう。
 ストーリーの内容は、ある部分で哲学的だし、ある部分でマニアックだし、ある部分で制作者の独り善がりだ。
 神になろうと思い上がったギルに天罰が降る話。
 ギルとカイの強大な力をこれ以上増強させないため、二人の子どもに能力を託して自分たちは老人になる話。
 そして、闇の声に耳を傾けすぎたギルが…。
 ほかにもエピソードは多岐にわたり(ギルが神になる話だけでも何種類かある)、そのいずれも話の意味のすべてを知るには、同シリーズの予備知識が不可欠となっている。
 ある意味、経験さえ積めば何とかなる『ドルアーガの塔』や『イシターの復活』以上に、マニアックなゲームと言えるだろう。

 このゲームでプレイヤーができることは、そうしたエピソードの数々を、ただひたすら享受することしかない。
 それを良しとするか否定するかは、もはやプレイヤー次第。悪く言えば一方的に結末を押しつける、良く言えば48もの結末のなかから好きなものを選べる、そうした作品だ。少なくとも、プレイヤーの意志が介入する余地は、全くと言っていいほどない。
 それゆえに、これはゲームであってゲームでない…そんな不思議な作品と言えるだろう。
RELEASE
1994.3.25. for SUPER FAMICOM